テニスのデータ分析・記録で活用されているテクノロジー
公開日:
最終更新日:2019/06/16
2019/06/16
こんにちは。
個人でテニスのデータ分析ツールをつくってる@otakoです。
今回は、テニスのデータ分析やデータ記録で活用されてるテクノロジーについて記事を書きました。
テニス×テクノロジー
ニュース記事をみていると、
「スポーツ×テクノロジー」、「スポーツテック」などのキーワードをみかけることも多くなりました。
テクノロジーをスポーツに適用することで、様々な面白い試みが生まれています。
自分が特に興味を持っているのが、センサやカメラなどのデバイスを使ってデータを取得するような技術です。
取得したデータは、試合を盛り上げるためや観客への情報提供に使われたり、プレーを解析して、技術のレベルアップや試合戦略に用いられたりと、様々な方法で活用されています。
テニスだとホークアイによるチャレンジシステムが有名ですね。
ボールの軌道を検出し、ラインのインアウト判定に使われたり、サーブのコース傾向を観客に情報提供したりしています。
テニス×テクノロジーで調べてみると、いろんな技術があるようです。
自分の知っている範囲ではありますが、ここで紹介してみたいと思います。
チャレンジシステム(ライン判定)やボール等の軌道解析
ホークアイ (ソニー傘下の英Hawk-Eye Innovations社)
ホークアイシステムは、複数のハイスピードカメラを用いてボールの軌道を検出することで、ラインのインアウトを判定(チャレンジシステム)することができます。
基本は審判が判定しますが、際どい判定の場合、選手がチャレンジして、ホークアイの軌道検出結果に判定を委ねることができます。
ボールの着地点がコンピュータグラフィックスで再現されてディスプレイに表示されますが、選手・観客ともに固唾を呑む場面となり試合を盛り上げる演出としても役立っているようです。
ボールの着地点や選手の移動軌跡など多くの情報も蓄積しており、↓の画像のようにサーブの着地点などビジュアライズデータが提供されたりもします。
画像出典:
スポーツ界を変える「ホークアイ」審判補助システム
ホークアイに関しての参考記事はこちら。
プロテニスの大会でお馴染み。審判の世界を変えたホークアイ技術の舞台裏
Foxtenn
チャレンジシステムは、ホークアイの1強でしたが、ここ最近Foxtennシステムを採用する大会も増えてきました。
サイトで確認してみると、ハイスピードカメラとレーザスキャナを使用しているみたいです。
選手がチャレンジすると、ホークアイはボールの着地をコンピュータグラフィックスで再現しますが、Foxtennは撮影した映像そのものを表示します。
ライン判定はハイスピードカメラ、それ以外のボールの軌道はレーザスキャナでボールの3次元位置を抽出して収集しているようです。
2018年の楽天オープンでもFoxtennが使われました。詳しくは話せませんが、自分もスタッツデータやサーブの着地点データの提供などで少し関わらせていただきました。
テニス楽天ジャパンOPの舞台裏〜錦織のプレーも調子もリアルタイムで丸裸
ライン判定の精度だけでなく、データ公開度も今後の新たな競争軸になると思っています。
データ公開が大会を盛り上げる一つの要素になり、大会側もデータ公開をうまくやれるシステムを選んでいく、というような時代になるんじゃないかと。
ボールの軌道や選手の移動軌跡、サーブやショットのスピードなどあらゆるものを測定できていそうですが、全ては公開されていません。
単純にデータをみせるだけだと反響も少ないので、どうやってデータを公開していくか、悩んでいるような段階かと思われます。
(マニア層としては、数字の羅列でもいいのでデータを公開してくれるだけでもいいんですけどね)
ホークアイとFoxtennとで競合してくれることで、データ公開がどんどん進むことに期待してます。
画像出典:
FOXTENN
データ提供システム
SlamTracker(IBM社)
グランドスラムで導入されている、リアルタイムにプレーのデータを取得・分析してサイトやアプリでデータ提供するシステムです。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
スラムトラッカー(SlamTracker)でテニスの試合を分析しよう
画像出典:
IBM Wimbledon SlamTracker Hopes Big Data Will Attract Fans
SAP Tennis Analytics for Coaches(SAP社)
女子テニス、WTAツアー用のコーチングアプリケーションがあるみたいです。
ショットのデータなど詳細データをアプリケーションにリアルタイムに提供し、コーチはそのデータを参考にして選手へのアドバイスに活用することができます。
WTAツアーはオンコートコーチングというルール(1試合に1回、選手が要求したタイミングでコーチと相談することができる)があり、そういった場面で多く活用されているようです。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
・女子テニスが先兵、「リアルタイム分析」が変えるスポーツ
・テニスの「ビッグデータ革命」、名コーチの本音
女子テニスはオンコートコーチングがあるおかげか、こうした活用例の記事をみかけることが多くなりました。
ルールがデータ活用を促進するいい例だと自分は思っています。
プレー解析
SmartCourt(PlaySight社)
6台のカメラをコートに配置してボールの軌道を検出してプレー解析し、コート横に配置した情報端末で分析結果を確認することができるようです。
イスラエルのベンチャー企業PlaySight社の開発で、ジョコビッチも出資していて、日本だと吉田記念研修センターで導入されているようです。
ボールを検出しているので、ホークアイやFoxtennと同類のような気もしますが、SmartCourtは大会興行向けではなく「練習やトレーニングに活用する」を目的にしたシステムのようです。
一般プレーヤでも利用できそうで、気になるシステムです。
こちらはSmartCourtの参考記事です。
アンディ・マリーを世界一に押し上げた、脅威のテクノロジー。テニス界の最新技術に迫る
ラケットセンサー
スマートテニスセンサー
スマートテニスセンサーは、ソニーが開発したラケット装着型のセンサデバイスです。ラケットでのヒッティングポイントや、フォアバックなどショットの種類、ボールの回転や速度、スイング速度などを測定してスマホアプリで確認することができます。こういうガジェット大好きで買いたい気持ちはあるのですが、テニスをやる機会がめっきり減ってしまって悩み中です。
ソニーとルネサンスが提案する「スマートテニスレッスン」–スポーツ×ITの可能性
テニススクールであるルネサンスと提携してラケットセンサとカメラ動画を活用したレッスンを提供し始めたみたいです。良いアプローチだと思います。
Babolat Play
Babolat Playは、スマートテニスセンサーと同じラケット装着型のセンサデバイスです。
ソニー製は後付けで埋め込むタイプですが、こちらはラケット内蔵型となっております。
トラックマン
ラケットセンサではありませんが、トラックマンはボールの回転数計測器で、主にゴルフで活用されているみたいで、テニスでの活用例もちらほらみます。
ドップラーレーダーをボールに照射して回転数を計測してます。
↑のスマートテニスセンサーは回転数ではなく回転レベルを表示しているので、絶対的な値(回転数)を測定したい場合はこちらを利用する必要があります。
値段は数百万するので個人では手が出せそうにないですが。。
たまにラケットの試打会とかで、測定してもらえたりするみたいです。測定してプロの数値と比較してみたい。
Wilson
データ分析ツール
PeranaSports
オーストラリアの会社PeranaSportsが開発したテニスデータ分析用のツールで、数年前からJTA(日本テニス協会)とも提携しているようです。
動画データから、ポイントのタグ付け、ショートの軌道など詳細データを記録できるようです。
「20年メダルポテンシャルアスリート強化メンバー」である錦織選手と大坂選手は日本テニス協会のデータ分析サポートを受けられるらしく、こちらの記事Osaka won 2018 US Tennis Openをみると、大坂なおみの全米決勝もPeranaSportsを活用したデータ分析サポートを受けていたみたいです。
これは余談ですが、オーストラリアはデータ分析系のツールに強い印象があります。
・SportsCode スポーツコード 動画解析ツール
・カタパルト(トラッキング用のGPSデバイス)
などスポーツ界で広く普及しているツールやデバイスの多くにオーストラリア発があります。
画像出典:
PeranaSports
データテニス(Androidアプリ)
自分の開発アプリで恐縮です。スコアを記録できるアプリで、GooglePlayで公開してます。
↓のGooglePlayリンクからデータテニスをダウンロードできます。
最後に
以上、テニスのデータ分析や記録に活用されているテクノロジーに関して、簡単に紹介しました。
スポーツテック関連のニュース記事をみていると、野球やサッカーなどが多いですが、テニスも他のスポーツに負けていないと思います。
ただ記録したデータの公開度を考えるとMLB(野球)、NBA(バスケ)、サッカーに負けてる感じがあるので、今後はどんどんデータ公開進めていってほしいです。
サッカー、NBA(バスケ)とかだと選手の移動軌跡となるトラッキングデータを一般公開していることもあるようなので。
まあ公開しても一部のマニアにしか受けないから出していないだけかもしれませんが。
テニステック関連、今後も新しい技術の登場でわくわくさせてくれることを期待してます。
あとプロ向けの技術が一般プレーヤーに普及していくことに期待してます。
そのあたり個人開発で貢献していきたいと思っています。
自分のスマホアプリの紹介をしましたが、スマホアプリ以外にも動画の解析ツールなどを開発しています。
個人でやっていることは、こちらの記事に書いてます。サイトについて(データテニス)