自作したテニスのビデオ分析ツールで錦織・デルポトロ戦を分析してみました
公開日:
最終更新日:2018/12/28
2018/12/28
テニスのビデオ分析ツールをつくって、先日行われた錦織・デルポトロ戦を分析してみました。
錦織がデルポトロに2-6 2-6(マイアミ3回戦)で負けてしまった試合です。
今回は、自作したビデオ分析ツールを使うことで、サーブの着弾点などの分析もできました。
自作ツールに言及するのは初めてなので、まずはビデオ分析ツールについて簡単に説明したいと思います。
自作したビデオ分析ツールについて
なぜ、ビデオ分析ツールを自作したか、理由は↓になります。
・ATPサイトServe Return Trackerでトッププロのコース毎のポイント率などが掲載されているのをみて、サーブの着弾点などを自分で記録・分析したくなった。
・商用のビデオ分析ツールは価格が高く、個人が趣味で買うにはちょっときつい。
と、いくつか理由はありますが、一番は「自分でテニスに関するアプリケーションを自作したい」
という自分のものづくり思考というか自作したい願望によるところが大きいです。
錦織も復帰しましたし、やってみるかということでトライしてみました。
Pythonというスクリプト言語と、TkinterというGUIライブラリで作成しています。
機能についても簡単に説明します。
↓の画像はツールの操作画面です。
動画をとりこみ、スコアやサーブの着弾点を記録することができます。
動画のフレームをコマ送りで進めながら、ポイント毎にシーン分割し、スコアやサーブの着弾点を記録していきます。
ボタンを左下に配置し、ボタンをクリックするとスコアなどが、右側に記録されていきます。
(ボタンの大きさが不均一だったりUIはまだ全く洗練されていませんが)
サーブの着弾点はボールの位置をマウスでクリックしてxy座標として記録していきます。
ポイントパターン(サービスエースやストロークエラーなど)
では、記録した試合データについてみていきます。
試合の全体感ですが、デルポトロはサーブだけでなく、ストローク戦でも試合を優位に進めました。
↓のグラフをみてみると、デルポトロがサービスエースやストロークエラーで多くポイントをとっていることがわかります。
このグラフは、どちらの選手がどうポイントをとったか、ポイントパターンの数を棒グラフで比較しています。
デルポトロのフォアハンドはトップ1、2を争うぐらい強力です。
錦織も基本、デルポトロのバックハンドにボールを集めるようにしていましたが、追い込む前にフォアに打って、
厳しいボールで返球されて劣勢に立ってしまう場面が多くありました。
錦織自身の自滅ショットも多かったかなと。序盤は互角のストローク戦を演じてたんですけどね。
デルポトロが、錦織のボレーエラーでとったポイントも4つあります。
錦織がデルポトロのバックハンドにアプローチを打って前に出ても、デルポトロがうまく足下に沈めて返球し、ボレーエラーしてしまうことが何度かありました。
デルポトロのバックの処理もうまかったですが、錦織のアプローチも少し甘かった、というのもあったと思います。
1stサーブの着弾点をみてみると、錦織はワイドとセンターとの打ち分けをうまくできていないようにみえる
次に、1stサーブの着弾点をプロットし、ワイド、ボディ、センターの比率とポイント率を確認してみました。
まず、デルポトロの1stサーブのコース率とポイント率です。
ボディのコース率は、Ad5.9%、Deuce7.7%と、非常に少なく、ワイドとセンターのライン際にエースを狙って打ってきていたことがわかります。
Adサイドに関しては、ワイドの方がポイント率が高く、コース配分も多く、デルポトロの得意コースみたいですね。ATPサイトで平均データをみてみても、Adサイドのポイント率は、Wide:78.9%、Center:70.4%でした。
次に、錦織の1stサーブのコース率とポイント率です。
デルポトロと比べてポイント率が一段劣ります。
あと、bodyコースが多いです。これは狙って打ってるんじゃなくて、ワイドとセンターとにちゃんと打ち分けられていないんじゃないかと。
あと、これは意外なんですが、deuceコースのワイドのポイント率が66.7%とセンター55.6%より高くなってます。ワイドはフォア側なので逆のデータになると思ってましたが。
外に追い出してからの展開の方が、そのあとのラリーを優勢に進められるということでしょうか。錦織のフォアへのワイドサーブは甘くなって叩かれるイメージをもってましたが、この試合ではまあまあうまくいったのかなと。
着弾点をプロットした図もみてみましょう。
上がデルポトロ、下が錦織のサーブ着弾点です。
やはり錦織のサーブはボディコースの多さが目立ちますね。
青色がポイントwonですが、デルポトロサーブdeuceのセンター、adのワイドが強力ですね。
錦織のAdサイドのリターン返球率が23%、特にワイドコースに苦戦
リターン返球率もみてみたいと思います。
錦織は、Adサイドのリターン返球率が23%(3/13)と、だいたい4ポイントに1回しかリターンを返せていなかったことになります。
Adサイド、返球できなかったポイントは13ポイント中、10ポイントで、そのうちエース5本、リターンエラー5本となります。
また、ワイドコースだとエース4本、リターンエラー4本なので、Adサイドはデルポトロのワイドコースでリターンをうまく対処できなかったようです。
↓のグラフはエースとリターンエラーとなった1stサーブの着弾点となります。
赤く囲ったところが、デルポトロのAdサイドワイドコースの着弾点です。
公式Statsだけではわからないことも確認できるようになった
以上、自作ビデオ分析ツールで、サーブの着弾点とポイント率などを絡めてデータをみてみました。
「錦織のサーブがボディコースが多い」とか、「錦織はデルポトロサーブ、Adサイドのワイドコースに苦戦した」とか、
公式Statsだけではわからなかったことを確認することができました。
データ記録に実際の試合の3倍ぐらいの時間を要するので、すべての試合でこれをやるのは厳しいですが、重要な試合など今後もビデオ分析ツールを使って分析していきたいと思います。